2024年一発目、靖国神社内にある遊就館の展示「新春刀剣展」に行ってきました!
新年から美しい刀を見られて心が洗われました。

概要

今回私が行ってきたのは、靖国神社内の遊就館で開催されている「 令和6年 奉納新春刀剣展 」です。
JR飯田橋駅から徒歩10分ほどのところにあり、アクセス良好です。
この展示は1月1日から1月13日まで行われています。
さらに私が訪問した1月2日は、なんと研師・鞘師・彫刻師さんの実技公開があり、間近で職人さんたちの作業の様子を見ることができました!
刀剣はもちろん、こちらの実技公開の方も今回訪問した大きな目的でした。
そして今回の展示の拝観料は無料!!ありがたすぎる…!!

実技

鞘師の水野美行さんが展示ブースで鞘の作成を行ってました。
自分の中の固定観念として職人さんて気難しくて仏頂面でなんとなく怖くて…というイメージがありました。
しかし、作業台の前に「質問相談はお気軽にしてください」との記載が。
職人さんと直接お話しできる機会なんてなかなかないし、勇気を出して気になったことを質問させていただきました。
するとそれはそれは丁寧にわかりやすく回答していただいて…!
質問させていただいたことだけじゃなくてそこから発展したことや、昔受けた変わった依頼の話などをたくさん聞かせていただきました。

ちょっとだけ教えていただいたことを箇条書きしておきます

  • 白鞘に朴(ほお)の木を使うのは、時間が経っても変形しないから
    • 松や杉はすぐに変形してしまうので、中に入れた刀が傷ついてしまうため鞘の作成には使われない
    • 一度過去に「杉の木で作ってほしい」という依頼を受けたことがある。杉で作ることの欠点を伝えた上でも作ってほしいとのことで白鞘を製作したことが、そのお客さんはそのあと一度も現れていない
    • 「朴の木以外に同じような特性を持つ木は他に存在するのですか?」と聞いたら、朴の木くらいしか聞かないし白鞘はほぼ100%朴の木で作ってるとのこと。もし日本に朴の木が生えていなかったらどうなってたんだろう…
  • 白鞘を作る時の接着剤として、お米を水で伸ばした続飯(そくい)を使う
    • 続飯を使うと、接着した後からでも白鞘を割ることができる(刀が錆び付いたりした時に、白鞘を割って内側を削ったりなどしてメンテナンスする必要がある)
    • この日は昨日炊いて食べたご飯の残りを続飯として使っていたらしい
    • 白鞘ではない普通の鞘は割れてほしくないので、続飯ではなくボンドを使って作る
  • 鞘を削るカンナの刃は実は真っ直ぐではない
    • 見た目上はほぼわからないが、中央が張り出て、左右が引っ込んだ円弧状になっている。ミリ単位の世界。
    • 購入するカンナの刃はまっすぐになっているが、あえてそのような形に自分で研ぐことで、白鞘がピッタリ接着する形に削りやすくするらしい。
  • 普段の作業場では、削ったところが陰になってどこまで削ったか、どこをどれだけ削れば良いのかの指針になるけど、今回の企画展示室だと作業場と光の入り方が違うため、ミリ単位の精密な作業はできない

色々教えていただいてとても嬉しかったし、勉強になりました。
正直今まで刀身ばかりに見ていて、白鞘に注意を向けることはなかったのですが、今回色々お話を聞いて、鞘の方にも興味が出ました。

研ぎ

研師の藤代龍哉さんが展示ブースで鞘の作成を行ってました。

弟子入りして1ヶ月ぐらいで、砥石を削る作業中に砥石が指からずれて指紋がなくなった話だとか、力を入れてずっと同じ手の形で作業しているとその状態から手を閉じられなくなった話だとか、厳しい修行の話を聞きました。ひえ〜〜。
しかし、中でも1番印象的だったのは、「刀を研ぐ音が心音に聞こえる」という話でした。
修行中は「見て覚える」場面も多かったそうですが、師匠が刀を研いでいるところを見ていると、刀を研ぐ音が心臓が脈打つ音に聞こえてついうとうとしてしまったそうです。
現代となっては日本刀は美術品として楽しむことがほとんどですが、人の命を奪うための道具である刀をより切れ味鋭く、より心臓の動きを止めやすくようにするための工程で、心臓の音がするというのはなんとも皮肉というか、言葉にできない儚い美しさを感じました。

刀剣展示

現代刀匠の打った刀剣の展示はもちろん、2024年は辰年ということで辰(龍)がモチーフになった武具の展示も複数されていました。
刀剣についてですが、キャプションが姿、地文、刃文、帽子、彫り、刀匠からのコメントというふうに分かれて記載がされていて、とてもわかりやすかったです。
あと遊就館の展示は、とても刃文の写真がうまく撮れるので嬉しいです。照明によっては全然うまく映らない時もあるので大変助かります。
展示の中で印象的だったものの写真をいくつか載せます。

吉原義人さんの脇差。
表裏で全然異なる刃文を焼いた脇差で、裏の刃文を見られるように鏡が置いてありました。素晴らしい気遣いの展示だ!!
お正月から美しい華やかな刃文を見られて、良い一年になりそう。


石井成道さんの脇差。
焼刃土をおかずに焼入れしたという珍しい作られ方をした刀!人間の意図が一切含まれない自然な刃文、と思うとすごくロマンチックなものに見えました。


加藤慎平さんの則重を意識した刀。穏やかなのたれの刃文と、帽子部分が可愛い。


目貫の展示もありました。
この子、何???(かわいい)

終わりに

新年早々、素敵な刀剣を見られて最高!
2024年は真面目に刀剣の勉強をしたいなと思っていたところ、直接職人さんの技を見られたりお話を聞けたりする機会に恵まれてラッキーでした。
毎年3が日はお家でゴロゴロしてるのでお家出るのが少し億劫だったのですが、行ってよかったです。
2024年もたくさん刀剣見るぞい!!